キッカケなんか、春でいい。
毎年春が近づくと、このCMが見たくなる。
初めて見たきっかけは、Twitterだった。
いわゆる"エモいCM"としてバズっていたのだ。
CMは、卒業式が終わり、帰路につく女子高生二人の自然な会話から始まる。
冒頭のやり取りで、主人公の女の子が片思いしていることがわかる。
知らない間に恋を実らせ、きれいにネイルをしている友人。
巻き髪で卒業式にのぞむ同級生。
真面目な学級委員長でさえ、帰り道にコロッケ屋で買い食いをしている。
そんな中、卒業式までは律儀に「校則から外れない高校生」を守っていた主人公。
好きな男子を斜め後ろから見つめているうちに、主人公だけ「起立」の号令に取り残される。
人生の門出に乗り切れない不特定多数の「春」と重なるこのシーンが、たまらなく好きだ。
どこにでも行けるのに、どこに行きたいのかがわからない。
そんな時の行き先は、美容院でもいいのかもしれない。
「髪切りに行くわ」
背筋を凛と伸ばし、しっかりとした足取りで人生を歩き始めた一人の少女。
「すべての18歳の、キレイを応援します」の文字に、「パン(拍手) リクルート」の声に、いつも少し涙が滲む。
こういう「いつの間にか最後まで見てしまっている」系のCMを見ると、つい自分の人生を振り返ってしまう。
私にはこんな甘酸っぱい青春はなかったけれど。
1歳2か月の息子は、この4月から保育園に通い始める。
2年近く続いた産休・育休が終わり、5月からは仕事復帰が待っている。
コロナ自粛も明け、あわただしい会社員生活が戻ってくる。
復職までに、美容院に行こう。
今年も早々に暑くなるみたいだから、新しい髪色に挑戦してみようかな。
今年もまた、このCMに背中を押された。
キッカケなんか、春でいい。
2月下旬なのに、都内では桜が咲き始めた。
今年はきっと、今までにない春になる。