2008年公開の映画『百万円と苦虫女』。
大学生の頃に初めて見て、蒼井優の可愛さに衝撃を受け、以来「生まれ変わったら蒼井優になりたい」と思うほど彼女にハマるきっかけとなった映画だ。
あらすじ
蒼井優演じる主人公の鈴子は、父、母、小学生の弟と団地で暮らす21歳。
短大卒業後は、バイトをしながら実家で暮らしていた。
しかし、とある事件をきっかけに鈴子は拘置所に入れられてしまう。
出所後は実家に居づらくなり、「100万円貯めて実家を出る」ことを決意する。
まずは海の家。次に桃農家、そして最後は地方都市。
そこでアパートを借り、バイトをしながら暮らす鈴子。
いろいろなバイトで経験を詰んできたからか、何をやってもそれなりに器用にこなせてしまう。
しかし、それぞれの土地で居場所ができそうになるたび、鈴子にとって不都合な状況に陥ってしまう。
周囲の興味の目から逃れるように、100万円を貯めては住む場所を転々とするが……。
とにかく、蒼井優が可愛い
映画そのものが蒼井優の写真集になりそうなほど、どこを切り取っても絵になる。
髪をてっぺんでお団子にして、自分のお弁当を作る姿。
コールセンターバイトの時の制服姿。
海の家で波を見つめてぼーっとする横顔(この時に着ている、白地に青の刺繡が入ったレトロなトップスがあまりにも可愛い)。
高い位置で結んだポニーテールを揺らしながら、てきぱきと焼きそばを運ぶ姿。
白Tシャツにブロックプリントのロングスカート、ピンクの肩掛けポシェット姿で、海に続く坂をすたすた下っていく姿。
トラックの荷台に揺られながら桃を丸かじりする姿。
コインランドリーで恋の始まりに気が付いたときの、白Tシャツ+だぼジーンズ姿。
窓枠に腰かけてコーヒーを飲む姿。
お風呂上りにノートをめくりながら缶ジュース(チューハイ?)を飲む姿。
なんてアンニュイで可愛いの……。
どの土地に行っても、なんだかんだで男性から好意を寄せられる鈴子。
儚げでミステリアス、けれど芯は通っている。
そりゃモテて当然だわ!!
ただ、「蒼井優が可愛いな~」「いろんな土地で暮らしてみるのも楽しそ~」と、何となく見ている分にはいい映画なのだが、
何度も見返しているうちに違和感というか、「その展開はちょっと無理があるんでは!?」と思う部分もいくつかあるにはあって。
たとえば、地方都市で鈴子の恋人となる中島くん。
最初は誠実な"THE好青年"だが、付き合ってしばらくたつと鈴子から頻繁にお金を借りるように。
他の女子とのお茶代まで鈴子が出す始末となり、最終的には鈴子から別れを切り出し、まだ100万円が貯まっていないにもかかわらず引越すことになる。
実は中島くんは、100万円が貯まったら鈴子が別の街に引越してしまうのではという寂しさから、引き留めるためにわざとお金を借りていたことがラストで分かる。
当然、その真意は鈴子には伝わっていない。
これはちょっと無理があるなぁというか、誠実な中島くんがそんなことするか!?と思ってしまった。
あと鈴子の弟が、同級生からの虐めから逃れるために中学受験を決めていたにもかかわらず、なぜか終盤「それは逃げなので、やっぱり奴らと同じ中学に行きます」と言ったり。
いやいや、まっとうな手段であって、逃げではなくない!?
せっかく成績優秀なのに、わざわざレベル落として虐めてくる奴らと同じ中学に行くという選択はいまいち納得いかなかったなぁ。
結果的に、弟の「逃げずに向き合う」という決断が、自分と他人から逃げ続けてきた鈴子を鼓舞することにはなるんだけど。
虐めは別問題では?と思ってしまった。
ラストシーン、鈴子と中島はお互いに気づいてる?
ラスト、中島くんは鈴子に真意を伝えるべく、追いかける。
しかしすれ違いが続き、近くにいるのに気が付かない。
鈴子と中島くんは、歩道橋をはさんで“ねじれの位置”にいる。
けれど、歩道橋の上を見上げた中島くんの目は、鈴子の姿をとらえていた気がした。
結局二人が会えたのか会えなかったのかは、映画の中では描かれていない。
二人の間の誤解が解けてたらいいな。
だって誤解が解けてなかったら、「ようやく恋愛できると思ったら、彼氏に(誤解とはいえ)金ヅルにされてることが発覚して別れた」っていう新たなトラウマが鈴子の中に増えるだけじゃん!!
でも、鈴子は強い女の子だなぁと思う。
短大卒業後、フリーターして、拘置所に入って、実家を出て、住む場所を転々とする。
21歳の女の子としてはかなりハードモードな人生だ。
そんな中、おそらく初めて実った恋だったのに。
それでも腐ることなく前を向き、切り替えている。
いろんな場所を転々としたからこそ、「出会うために別れる」と気が付いた。
逃げたからこそ、地に足をつけて生きる覚悟ができた。
彼女は、次はどんな街で暮らすんだろう。
この映画で描かれてた季節はたぶん春~夏の終わりくらいだろうから、秋冬バージョンも見たいと切に願う。